春がやって来て、カタクリが咲き出す時期になると思い出してしまう。20数年前、関川村鷹巣キャンプ場で偶然に鉢合わせした。
撮ることは出来たが、あのなんだか泣きそうな顔つきは今でも忘れられない。
彼はせっせと前脚で足元の地面を掘り起こし、カタクリの根を食べて いたが、予期せぬ人間が目の前に現れて面食らったのかな。
それとも、とっくに私という存在を認めていて彼なりに圏界を維持したまま、ギリギリまでむさぼり食べていたけど、「もう限界!」と、顔を上げたか?
どっちにせよ食事の邪魔をしたみたいで、ひどく申し訳ない気持ちになった。
これから程なくして写真を去ってしまっていたが、数年ぶりに戻ってみると偶然にもカモシカのあの独特な足跡を雪面に認めたのでした。
その時は、紡ぐ命の尊さに小躍りするぐらいうれしい気持ちになった。
そして昨年カタクリの時期に再びやって来て、地に伏せて写真を撮っていた時、“もののけ”を感じて辺りを見渡すと、カタクリ山のてっぺんに彼がいたんだな。
じっとして、首をちょっと傾げて、此方を見下ろしていた。
おそらくはあの時の彼ではないでしょうが、懐かしいさがこみ上げてきました。泣き出しそうな顔つき・・・あの時見た光景と一緒だ・・・と。
大きさからして、一回り小さいです。彼の子孫でしょうか。たぶんそうかな。確証なんかひとつもないけど、どうしてもそう関連付けてしまう立ち姿でした。
もうじき、カタクリが咲き出します。あの子どもに会えると良いのだが。
RVP100 80-200 zoomLens f/2.8 D NikonF5 関川村にて
*横位置カットは今回初掲載。ポジの保存状態は良好と言える。
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