すべて黒尽くめの男

その男は服、ズボン、靴、リュック、帽子、自転車、マスクまで全て黒尽くめ。

“見送りデッキ”(そんなものはない)へ軽快な車輪回しでやって来ては、手摺りに手を掛け体を安定させると、佐渡へ向けて出て行くフェリーを見送り始めたのだった。

僕は少し離れた川上に居て、その際に道路を軽快に走っていくこの男の姿を見ている。

出港する際に上流を向いていたフェリーが旋回を始め、僕は眺めの良い川下へと急ぎ足で向かっていたが、彼は僕より一足早くその場に到着したことになる(結論から言えば)。

彼が急いで自転車漕いでいたのはそのせいかもしれない。

僕は船より彼の姿に妙に惹かれた。すぐに「撮りたいな」って。

だんだん小さくなっていくフェリーを見送る男・・(あぁ~・・良い・・良いかも。撮れ!そうしないとまた後悔するよ・・さぁ、どうする?撮るのか撮らないのか)

よっしゃ~ぁ!(気合いを入れ、深呼吸する)。

近づいた(歩き出したら、もう止められない)

「申し訳ない1枚 いや2枚だけ 船を絡めておたくさんの後ろ姿を写真に撮りたい」

笑いながら(黒マスクしてたけど目がそうだった)「構いませんけど どうぞ」

(いとも簡単な即答に今までのオイラの緊張状態は何だったのよ)

うれしかったです。

すぐに下がってこんな構図にしたんだ。

あとは遠ざかる船の後ろ姿を画面の左にもってこようと。

ところが出て行く船の速度が思っていた以上に遅い。

コチラはこの構図を維持したまま左に動く(構図にちょっとでも安定性を持たせようとした 左の空間が広すぎるから 横位置構図は全く考えていない)。

でも、船の横っ腹や彼の横顔が写り込んでしまうのだな。

またまた右に動いて元の位置へ。

まだ船の位置は中途半端(速度が出ない)。

・・もういいや・・

この人を待たせるわけにはいかないから、この状態で2枚撮った。

撮り終えたところで礼を述べたら、彼は「じゃあ」と言うなり来た道を逆コースをたどるように帰っていったのだった(スピードかなりでてる)。

ネガが出来上がった。

案の定、中途半端な構図。

もったいねぇ~。

同時にもしも彼と再会してこの写真を見せた時の彼の一言を思い浮かべた。

「なんだぁ~・・途中じゃん・・半端じゃないか」。

絶対にそう言うに決まってる。

全く面識のない人様に声かけして撮影した写真2枚目。

ACROS 100Ⅱ Ai-Nikkor 35f/2s+Y2フィルター NikonF3  5月23日撮影

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萬代橋・夜明け前

葉っぱの壁

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