壊れた消防車がそこにある。
いつになったら撤去されるのだろうと気にはなるが、フェンスの向こう側だし、立ち入り制限区域でもあるから、積極的な関心を持つまでには至らない。
覗いていると監視されてる気分にもなる。
ところが、夏が終わり秋がやって来て、そろそろ冬の足音が聞こえてきそうな時期になって、そこの寂れた荒野は存在感を増してきた。
おそらくは目にしている様々な形が一体化してきたためだろう。
片目が飛び出し、バックミラーもなぜか反転してしまった消防車を中心に、枯れ草や背後の人気のない工場棟が脇役として浮かび上がってきた。
視線を向ける回数も増した。眺める角度も。想う時間も。
写真
フェンスにレンズを押し当てみた。
思わず笑ってしまいましたね。
フェンスの編み目が少しでも大きな部分から向こう側を撮った形跡があるんです。
形の丸い黒ずんだ擦れ痕が、僕がレンズを押し当てようとしたまさにそこにピンポイントで付いているんですね。
レンズフードの痕でしょうか。
レンズの焦点距離は知る由もありませんが、僕と同じように撮っている人がいると思うとなにか不思議です。
その人は壊れた消防車や背後の風景を観てどう感じてたのだろうと。
RVP100 Ai-Nikkor 180f/2.8s ED NikonF3 臨港埠頭 12月1日撮影
この記事へのコメントはありません。