ほかに別家族の野良猫もいたが、こいつだけ爪を出したことがない。
やがて一匹で姿を見せるようになると、室外機の上が定位置となった。
子供の頃は愛くるしい顔つきだったか、大きくなるにつれ、どう猛に。
その雰囲気が女房に似ていたこともあり、よく女房の名前で呼んでいた。
食事を与えないと何時までもニャ~ニャ~鳴いていて、それでも与えないと更に大きな声でがなり立てていたから始末が悪い。窓を閉めていても聞こえてくるぐらいだ。
そのうち「野良猫にエサを与えてはいけません」と回覧板が回ってきた。
この猫、不思議なことに私たちに子供が出来てから来なくなった。私が部屋の中へ招き入れなくなったせいもある。来なくなる前の寂しげな表情は今でも忘れられない。
オイラが死んであの世でこいつと再会できたなら、まず最初に謝りたいな。あの時の俺の態度や振る舞いに対しどんな思いを抱いたのか聞いてみたいと真面目に考えている。
過去写真
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